医院継承とは?開業するときのメリット・デメリットや注意点を解説

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握手している医者

医院を開業するためには、開業資金の準備や患者の獲得が課題となります。これらの課題を解決して開業する方法として、医院継承が挙げられます。

医院継承であれば低コストで開業でき、患者を引き継いで経営を軌道に乗せやすいというメリットがあります。本記事では、医院継承のメリット・デメリット、注意点を解説します。

医院継承とは

医院継承とは、閉院を検討している経営者から医院開業を希望する方へ医院を譲渡し、経営を続けてもらうことをいいます。医院継承は別名「継承開業」とも呼ばれ、すでにある医院を継承して開業することで、開業費を抑えられたり、患者を集めやすかったりするメリットがあります。

開業医には定年がないため、60歳を超えても地域医療を維持するために医師を続ける方も多く、患者を引き継ぐ「医院継承」は重要な選択のひとつであるといえます。

医療機関の後継者が非親族である割合は、診療所で12.4%、病院で35.3%であると公表されていることから、後継者に悩む医師のなかには、親族以外への医院継承を選択する方も多いことがわかります。

医院継承には、「親子継承」と「第三者継承」があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

参考:日医総研ワーキングペーパー「医業承継の現状と課題」

親子継承

親子継承とは、閉院を検討している経営者の子どもが医師となり、医院を継ぐケースのことです。親の医院で副院長となって最終的に医院を継ぐ形が多く、親子であることからスタッフや患者などの理解も得やすい傾向があります。

第三者継承

近年は、後継者不足から親子継承以外に血縁関係のない方に医院を譲渡する「第三者継承」が増えています。第三者継承では、専門家などに依頼して外部の後継者候補を探します。ただし、第三者継承を視野に入れるなら、医院以外の人脈構築が重要です。

また、開業を希望している医師へ引き継ぐ以外に、医療法人によるM&Aというケースもあります。

医院継承のメリット

医院継承のメリットを紹介します。

開業の初期費用を抑えられる

医院継承では建物や医療機器を引き継げるため、開業時にかかる初期費用を抑えられます。

また、新規開業の場合は開業を告知して患者を集める必要がありますが、医院継承ではすでに医院の認知度がある程度高いと期待されるため、広告費を抑えられる上に開業当初からある程度の収益が見込めるでしょう。

スタッフや患者を引き継げる

医院継承では、継承元のスタッフや患者を引き継ぐケースが多く、開業時のスタッフの採用活動や宣伝活動にかかる手間やコストを削減できます。

さらに、治療中の患者を引き継ぐこともできるため、患者の負担も軽減でき、地域医療を維持できるのもメリットです。

開業までの準備期間を短縮できる

医院継承であれば、新規開業に比べて開業までの期間を短縮できます。医院継承では、物件の取得や内装工事、設備の導入、スタッフの採用といった過程をある程度省略できます。

また、既存の患者を引き継げるため、開業後も経営が軌道に乗りやすく治療に専念できるでしょう。

医院継承のデメリット

続いて、医院継承のデメリットを紹介します。

選択肢が少ない

医院継承は、新規開業に比べて物件の選択肢が少ない傾向があります。希望条件に合う物件を見つけるのが難しく、希望にマッチしない立地やエリアで開業せざるを得ない可能性もあるので注意が必要です。

スタッフや患者の反発が生じる可能性がある

医院継承では、継承元のスタッフの雇用継続や患者の引継ぎが可能ではあるものの、新たな経営方針や診療方針を掲げると、スタッフや患者の反発が生じる場合があるので注意しましょう。

場合によっては、スタッフが離職したり、患者が来院しなくなったりする可能性があります。そのため、医院継承時はスタッフや患者との信頼関係の構築を重視することが大切です。

建物や医療機器の修繕・買い替え費用がかかるケースがある

医院継承は、建物や医療機器を引き継げることから開業にかかる初期費用を抑えられますが、建物の老朽化や医療機器の不具合によって、修繕費や買い替え費用が発生する場合もあります。

予期せぬ出費に困らないためにも、継承元の建物や医療機器の状態を事前に確認しておきましょう。

医院継承の費用相場

電卓で計算している医者

医院継承によって開業する際は、「譲渡対価」と「仲介手数料」の2種類の費用がかかります。

譲渡対価とは、医院を引き継ぐ医師から前院長に対して支払われる費用のことです。譲渡対価の相場は、建物や医療機器の価値、医院の年間の営業利益によって異なりますが、1,000万~4,000万円程度です。

仲介会社に依頼して医院継承をする場合は、仲介手数料として対価の10%または500万円程度の費用が別途必要となります。

医院継承の手続き

医院継承は、一般的に以下の流れで行われます。

  • 候補の医院を選定
  • クリニックの院長との面談
  • 条件を調整して基本合意書を締結
  • 買収監査(デューデリジェンス)を実施
  • 最終譲渡契約書の締結
  • 行政手続き(保健所・法務局・税務署など)

医院継承には、さまざまな手続きが必要となり、専門的な知識がなければトラブルにつながる恐れがあります。そのため、医院を継承する際は、労務や税務に詳しい専門家に相談する方がよいでしょう。

医院継承する際の注意点

医院継承を成功させるためには、注意点を押さえておくことが大切です。ここでは、医院継承する際の注意点を紹介します。

医院の経営状況を確認する

閉院を検討している医院のなかには、後継者がいないところだけでなく、経営がうまくいっていない医院も含まれている可能性があります。経営不振の医院を継承すると、継承後の経営が難しくなってしまいます。

そのため、医院継承をする際は、継承元の経営状況を事前によく確認してから手続きを進めることが大切です。

経営理念や診療方針を事前に確認する

医院継承後にスタッフや患者の反発が生じることを防ぐためにも、経営理念や診療方針を事前に確認しておくことが大切です。

可能であれば、継承前に勤務医として診療を担当し、スタッフや患者との関係を築いておきましょう。また、前院長の経営理念や診療方針を完全に無視するのではなく、うまく取り入れてスムーズな医院継承をめざしましょう。

スタッフの引き継ぎは慎重に検討する

医院継承ではスタッフを引き続き雇用できる場合が多いものの、必ずしも引き継ぐのがよいとは限りません。引き継ぐ医師との相性やスタッフの希望も考慮する必要があります。

そのため、引き継ぐタイミングで新たな方針の説明や勤務時間、賃金などの雇用条件の見直しをした上で双方が納得して雇用を続けるのがよいでしょう。場合によっては、新たなスタッフを採用した方がよいケースもあります。

他の医療機関や医師会との関係を構築しておく

医院を継承する際は、継承元が連携していた医療機関を確認しておくことが大切です。精密検査や手術に対応するためにも、連携の取れる医療機関との関係構築が重要といえます。また、医師会とのつながりも大切にしましょう。

医院継承でよくある質問

医院継承でよくある質問を紹介します。医院継承をする際にトラブルを防ぐためにも、疑問を解消しておきましょう。

診療所の継承開業にかかる期間は?

診療所の継承開業にかかる期間は、4~6ヶ月程度です。ただし、現在勤務している医師の退職時期や譲り受ける建物の状態によって異なります。建物の老朽化が進んでいる場合は、修繕や改装工事が必要となるため、継承する際は建物の状態もよく確認するようにしましょう。

新規開業する場合は、物件探しをはじめてから開業まで6ヶ月程度かかります。建物を新たに建てる場合は1年程度かかるため、新規開業ではなく継承開業をすることで、開業までの期間を短縮できるでしょう。

継承後に医院の名称を変えることは可能?

継承した医院の名称を変更することは可能です。保健所に新名称で開設届を提出することで、名称を変更することができます。

医院の名称を変更した際には、厚生労働省や医師会、健康保険組合などに報告する必要があります。また、ホームページや診察券、物件の契約名義の変更も忘れないようにしましょう。

継承前の医療トラブルが問題となった場合はどうすればいい?

継承前の医療トラブルに関しては、前任の医師が責任を取るべきであるため、責任の所在を明確にするために譲渡契約書にその旨を記載しておきましょう。

なお、継承後の医療トラブルに関しては継承した医師が責任を取ることになります。

開院中と閉院後の診療所では、引き継ぐ場合に違いがある?

閉院してから時間が経過した診療所を引き継ぐ場合、患者やスタッフの引継ぎが難しくなります。患者がすでに別の病院に通院していたり、スタッフが別の職場に勤務していたりする可能性があります。

医院継承では、既存の患者やスタッフを引き継げるのがメリットのひとつであるため、閉院後の診療所ではなく、閉院を検討している診療所を引き継ぐのがよいでしょう。

融資のご相談は「AGメディカル」へ

医院継承では、開業時の初期費用が抑えられるなどの事情から開業時からある程度の収益が見込めるため、新規の開業と比較した場合に見通しが立てやすいなどのメリットがあるでしょう。

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まとめ

医院継承は、開業の初期費用を抑えられたり、スタッフや患者を引き継いで開業時からある程度の収益が見込めたりするメリットがあります。

ただし、場合によってはスタッフや患者の反発が生じたり、建物の修繕費や医療機器の買い替え費用が発生したりする可能性があるので注意が必要です。継承後の経営を安定させるためにも、継承する医院の経営状況や方針をよく確認して、スタッフや患者に配慮しながら継承しましょう。

AGメディカルの診療報酬担保ローンは、診療報酬を担保に最高10億円までのご融資を受けられるため、医院経営のためのご融資を受けたい方はAGメディカルにご相談ください。

監修者

大泉 稔

大泉 稔

株式会社fpANSWER代表。明星大学日本文化学部言語文化学科卒業。企業研修の講師を務めていて、受講者の人数は延べ1万1千人を超える。専門誌やWEBへの寄稿も対応しており、最近は個人のお客様から投資のご相談を頂く機会も増えてきている。また専門学校2校および高等学校1校、進学塾の各非常勤講師も兼務。

資格情報

1級FP技能士・貸金業務取扱主任者・1種証券外務員
https://www.cfpm.biz/外部リンクアイコン

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