歯科医院の経費を抑えるには?計上できる範囲も解説

医療機関/クリニック/歯医者

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歯の治療をする歯科医師

歯科医院を経営していくうえで、経費の管理は重要です。経費を把握して適切に管理・削減すれば、安定した経営と収益性の向上につながります。

本記事では、歯科医院で発生する主な経費の種類や経費を抑える方法を解説します。経費として計上できる範囲についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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歯科医院の主な経費

歯科医院の主な経費は、大きく分けて以下のとおりです。表内の数値は、医業収益全体に占める割合の平均値を表しています。

各項目

給与費

医薬品費

歯科材料費

委託費

減価償却費

その他

個人

30.2%

1.5%

7.5%

8.0%

5.8%

21.1%

医療法人

48.0%

1.0%

8.3%

6.4%

4.5%

23.3%

出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査」

歯科医院の主な経費のうち、人件費(給与費)は、医業収益全体に占める割合が最も大きく、経営に与える影響も大きいため、特に適切な管理が欠かせません。

歯科医院の経費を抑える方法

以下で、歯科医院の経費を抑える方法を紹介します。

勤務時間や業務プロセスを見直す

人件費は歯科医院にとって最大の経費であり、なかでも無駄な残業は大きな負担となります。人件費を削減するためには、勤務時間や業務プロセスを徹底的に見直すことが不可欠です。

たとえば、予約システムを最適化することで患者の来院時間を分散させ、特定の時間帯への業務集中を避けることができます。また、電子カルテやオンライン問診票を導入して受付や入力作業を効率化することも有効です。

また、スタッフのスキルアップを進めることで柔軟な人員配置が可能になり、業務の偏りから生じる残業を抑制できます。さらに、業務マニュアルを整備して誰でも一定の品質で作業を行えるようにすれば、引き継ぎや教育にかかる時間も短縮できます。

院長が定時退社を心がけ、残業を良しとしない院内文化をつくることも大切です。

仕入れ値を抑える工夫をする

医薬品や材料費は、診療の質に直結する重要な経費です。

仕入れ値を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取り、積極的に価格交渉することが基本です。長年の取引がある業者であっても、定期的に他社と比較検討し、よりよい条件を引き出しましょう。

また、近隣の歯科医院と共同購入することで、ロット数を増やせるため単価を下げられる可能性があります。さらに、効果が同等であればジェネリック医薬品を積極的に採用し、患者への丁寧な説明を通じて理解を得ることも重要です。

高価な新素材や最新技術の導入は魅力的ですが、費用対効果を慎重に検討し、本当に必要なものに絞って投資するようにしましょう。

在庫管理を徹底する

適切な在庫管理は、医薬品や材料費の無駄をなくすうえで重要です。古い材料から優先的に使用する「先入れ先出し」を徹底することで、期限切れによる廃棄ロスを防ぎます。

また、過去の診療データや年間の変動を分析し、必要な材料量を正確に予測して、適切な発注点を設定しましょう。過剰な在庫は無駄な資金を拘束するだけでなく、管理コストも発生させます。

定期的な棚卸しを実施し、帳簿と現物を一致させることで、紛失やデッドストックの早期発見にもつながります。

宣伝効果が低い媒体を中止する

広告宣伝費は新規患者獲得に不可欠ですが、費用対効果の低い媒体に投資し続けるのは避けるべきです。各広告媒体による宣伝効果を調べて、それぞれの新規患者獲得数を確認しましょう。

まず、初診時の問診票や聞き取りで「何を見て来院したか」を確認し、媒体ごとの効果を数値化します。

WEBサイトからの集患であれば、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを活用してアクセス経路や閲覧数の多いページを分析することも有効です。

データに基づき、費用対効果が低い媒体は中止するか、掲載内容を見直す必要があります。

水道光熱費・通信費削減のために工夫する

水道光熱費や通信費は毎月発生する固定費ですが、日々の心がけと設備の工夫で削減が可能です。まず、不要な照明の消灯やエアコンの適切な温度設定を意識し、スタッフ全員に節電意識を浸透させることが重要です。

従来の蛍光灯からLED照明への切り替えは、初期投資はかかりますが、長期的に見て電気代を大幅に削減できます。また、使用頻度が低い電話回線を解約したり、通信プランを見直したりすることも大きな削減につながります。

そのほか、時間帯に応じて患者が少ない待合室の照明は一部消灯するなど、柔軟に対応できる部分がないか検討すべきです。古くなった治療ユニットや、レントゲン機器などの消費電力の大きい医療機器を、省エネ性能の高い最新機器に更新することも有効です。

歯科医院の経費を削減する際の注意点

歯科医院の経営を安定させるうえで経費の見直しは不可欠ですが、やり方を間違えると悪影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、歯科医院の経費を削減する際の注意点を紹介します。

サービスの質を低下させない

経費削減は重要ですが、患者が受ける医療の質や快適さを低下させないように注意しましょう。

安価な材料への切り替えによって治療結果が悪化したり、過度な人員削減で待ち時間が増えたりすると、患者満足度が低下し、結果的に来院数の減少につながる恐れがあります。

削減対象とする経費が、直接・間接を問わず患者の体験にどう影響するかを慎重に判断することが重要です。

労働環境を悪化させない

人件費は経費の大きな割合を占めますが、安易な賃金カットや人員削減はスタッフの不満や離職につながり、結果として採用コストや業務効率の低下を招く可能性があります。

また、過度な業務負担増加や、必要な備品・設備の購入を控えることは、労働環境の悪化につながり、スタッフのモチベーション低下や医療ミスのリスクを高めることにもなりかねません。

経費削減は、スタッフの理解と協力を得ながら進めることが大切です。水道光熱費の見直しや節約を行う際も、従業員や患者が快適に過ごせる環境づくりは忘れないようにしましょう。

長期的な視点を持つ

目先の経費削減にとらわれすぎると、将来的な成長や競争力を損なう可能性があります。

前述のとおり費用対効果を考慮のうえ検討する必要はありますが、最新の医療機器への投資を控えると、提供できる治療の幅が狭まり、競合医院との差別化が難しくなるでしょう。

機器の交換時期を誤ると更に費用がかかる可能性もあります。また、広告宣伝費を削減しすぎると、新規患者の獲得が滞り、将来的な売上減少につながります。

経費削減は、医院の持続的な成長を見据え、投資すべき部分と削減すべき部分を戦略的に判断することが重要です。

経費として計上できる範囲と注意点

歯科用機器のセット

安定した経営には、漏れなく経費を計上し、節税につなげることが大切です。

ここでは、経費として計上できる主な項目と注意点を解説します。

人件費(給与費)

歯科医院で最も大きな割合を占めるのが人件費です。

院長をはじめ、歯科医師、歯科衛生士、受付スタッフなど、すべての従業員の給与、賞与、各種手当、退職金などは経費として計上できます。ただし、市場価値に見合った金額でない場合、税務調査で指摘される可能性があるため注意が必要です。

また、個人事業主が家族を従業員として雇用している場合、通常は生計を同一にしている者の給与は経費として認められませんが、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することで認められる場合があります。

ただし、「歯科医院の仕事に専ら従事している」という条件があるため、大学生や他に仕事をしている人の給与は計上できません。

医薬品費・歯科材料費

患者の診療に直接関わる医薬品費・歯科材料費は経費として計上できます。

対象となるのは麻酔薬、レントゲンフィルム、詰め物や被せ物の材料、インプラント、矯正装置など多岐にわたるほか、受付で販売する歯ブラシなどの仕入れ費用も含まれます。

ただし、年度内に実際に使用した分のみが対象となるため、使用しなかった分は棚卸資産として振替計上する必要があります。また、歯科技工士に支払う歯科技工料も材料費に含まれ、年度内に使用した分のみ経費として計上可能です。

家賃

賃借ビルや貸家で診療する場合、家賃や駐車場代も経費として計上できます。ただし、自宅を兼ねている場合、居住部分は経費に計上できないため、家事按分が必要です。

また、親族に家賃を支払う場合は、生計を同一にしているかどうかで扱いが異なり、生計を同一にしていない場合は経費として計上できます。

水道光熱費・通信費

歯科医院を運営するうえで日常的に発生する水道や電気、ガスの使用料は経費として計上できます。加えて、院内で使用する固定電話やインターネット回線などの通信費も計上可能です。

ただし、医院が自宅を兼ねている場合は、医院で使用した分と住居で使用した分を分けて算出する必要がある点に注意しましょう。

消耗品費

日常的に業務で使用する物品にかかる消耗品費も経費として計上できます。事務用品(ペン、コピー用紙など)や清掃用品、トイレットペーパーといった備品類のほか、グローブやマスク、患者用のコップなど、使い捨ての医療消耗品なども含まれます。

ただし、金額によって計上方法が異なり、10万円未満のものは消耗品費として計上できますが、10万円以上のものは一括償却資産または固定資産(器具備品)として計上します。

減価償却費

減価償却費とは、高額な医療機器(レントゲン、CT、治療ユニットなど)や内装工事費などの固定資産の購入費用を、一度に経費とせず、使用可能な期間(耐用年数)にわたって分割して計上する費用です。

PCや冷暖房機器なども対象となりますが、時間の経過や使用によって価値が減少しない土地などは、減価償却費に該当しないため注意が必要です。

委託費

歯科医院の一部業務を外部の専門業者に依頼する際に発生する費用も、委託費として計上できます。代表的なものとしては、歯科技工所に義歯や被せ物の製作を依頼する費用が挙げられます。

そのほか、医療廃棄物の処理や清掃業務、税理士や社労士への顧問料も含まれます。

ただし、業務履行にかかる費用は委託業者の負担となるため、計上できない点に注意が必要です。

広告宣伝費

新規患者の獲得や医院の認知度向上のための広告宣伝費も経費として計上可能です。広告宣伝の手段はWEBサイトの制作・運用、リスティング広告、SNS広告、チラシ作成、ポータルサイトへの掲載など多岐にわたります。

なお、宣伝のために支払った費用であっても、特定の企業や個人を対象とした場合は「交際費」になるため注意しましょう。

交際費

メーカー担当者の接待や、同業者と情報交換をするための飲食代は交際費として計上できます。飲食代だけでなく、贈り物にかかった費用も交際費の範囲内です。

ただし、相手の住所や氏名などを明確にできない場合は、業務上必要な支出である証明ができないため計上できません。また、スタッフの歓迎会や忘年会などの費用は「福利厚生費」になるため注意が必要です。

福利厚生費

社宅や慶弔見舞金、健康診断費用など従業員のための支出は、福利厚生費として計上できます。福利厚生費として計上できる要件は、以下の3つです。

  • 賃金ではないこと
  • 全従業員が利用できること
  • 社会通念上、金額が妥当であること

偏った支給や高額な支出など、要件を満たさない場合は経費計上できず、課税対象となるため注意しましょう。

旅費交通費

研修やセミナー参加にかかる出張旅費や交通費も旅費交通費として経費計上できます。ただし、セミナー費用自体は「研修費」となるため区別が必要です。

また、海外出張に家族を同伴させたり、同時に観光をしたりする場合、観光費用や家族の旅費は計上できません。関係書類を保存しておき、計上できる金額を明確にする必要があります。

研修費

業務上必要なスキルを習得するために要したテキスト代や、セミナー参加費などは研修費として計上できます。

ただし、事業に関係のない研修や資格取得に要した費用は計上できないため注意が必要です。

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まとめ

歯科医院の経営には、人件費、医薬品費、家賃などさまざまな経費が発生します。経費を適切に計上することで、節税につながるでしょう。また、無駄な残業をなくしたり、仕入れ値を抑えたりする工夫をすれば、経費を削減できる可能性があります。

ただし、経費を削減する際には、サービスの質を低下させないことや、労働環境を悪化させないことを意識することが大切です。

経費削減の工夫をしても資金繰りが難しい場合は、融資を検討することをおすすめします。

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監修者

北田 悠策(きただ ゆうさく)

北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

資格情報

公認会計士・税理士

https://ardor-tax.jp/外部リンクアイコン

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