【病院経営者向け】レセプトとは?重要性や取組むべきことを解説!

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レセプト(診療報酬明細書)とは、診療報酬を請求するための書類です。患者へ提供した診療に対して、国が定めた診療報酬を受取るために必要な書類で、病院の経営に大きな影響を与えます。

確実に診療報酬を得たり、入金が遅れる事態を防いだりするためにも、正確なレセプト作りは欠かせません。病院経営者の方は、経営が苦しくなる事態を防ぐためにも、レセプトが果たす役割や正確に作成することの重要性を認識しておきましょう。

今回は、病院経営におけるレセプトの重要性やレセプトの作成から入金されるまでの流れ、正確なレセプトを作成するために経営者が取組むべきことなどを解説します。

レセプト(診療報酬明細書)とは

患者にタブレットを見せる女性

レセプトとは、医療機関が保険者に対して、医療費を請求するために発行する明細書です。請求相手である「保険者」とは、協会けんぽや健康保険組合、国民健康保険組合などが該当します。

レセプトの種類には、医療機関から発行されるものや調剤薬局から発行されるものなどがあり、具体的には以下のとおりです(※)。

  • 医科入院レセプト
  • 医科入院外レセプト
  • DPCレセプト
  • 調剤レセプト
  • 歯科レセプト

医療機関は、各患者の入院・外来・調剤別のレセプトを診療月ごとに作成しなければなりません。請求したレセプトは社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会で審査され、問題がなければ約2カ月後に入金されます。

基本的に、医療機関は人件費や設備・医療機器のリース代、水道光熱費などの運営コストを診療報酬でまかなう必要があります。

算定漏れにより本来よりも受取れる診療報酬が低くなってしまう事態を防ぐためにも、医療事務員や病院の経営者は、レセプトを正確に作成できるようになっておく必要があります。

参照:厚生労働省参考資料第1章「レセプトとは」

病院経営におけるレセプトの重要性

正確な診療報酬を受取るために、レセプトは正しく作成しなければなりません。医療機関にとって、レセプトは持続可能な経営を実現し、抱えている課題を把握するうえで欠かせない存在です。

不適切な請求をすると、診療報酬が減額されたり返戻により入金が遅くなったりして、資金繰りが悪化する恐れがあります。病院経営におけるレセプトの重要性を理解し、医療事務員と意識を共有しておきましょう。

収入源である診療報酬を適切に得る

レセプトの適切な作成は、医療機関の収入に直接的な影響を与えます。

医療機関の収入は患者が窓口で支払う負担金(1~3割)と、保険機関の負担金(7~9割)で構成されます。レセプトで請求する部分は保険機関の負担金(7~9割)にあたり、医療機関にとって経営の生命線ともいえる重要な収入源です。

特に、自由診療をせずに保険診療のみ行う医療機関にとって、診療報酬は経営を維持するために欠かせません。

請求漏れや算定ミスが発生すると、本来受取るべき収入を得られず、損失につながります。提供した医療サービスに見合った収入を確実に得るためにも、レセプトを正確に作成し、適切に請求することは重要です。

正確に書類を作成して経営収支の悪化を防ぐ

正確にレセプトを作成したら、社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会へ送る必要があります。誤りがあると、診療報酬が減額されたり差し戻し(返戻)を受けたりする可能性があり、経営に悪影響が出ます。

診療報酬が減額されると収入が減るため、当然ながら病院の経営にとってマイナスです。差し戻しを受けると入金が遅くなるため、経営収支の悪化につながりかねません。

たとえば、レセプトに適切な病名が付与されていなかったり、診療内容と傷病名の整合性に疑義があったりすると返戻されます。病院の経営を安定させるためにも、正確にレセプトを作成することは、非常に重要な要素といえるでしょう。

経営状況を分析するためのデータを収集する

レセプトには、各患者の診療データが含まれています。詳細な分析を通じて、医療機関として改善すべき課題や現状を把握できるため、経営分析のツールとしても役立つでしょう。

たとえば、レセプトを通じて以下のようなデータを分析できます。

  • 診療科別の収益性
  • 患者層の分析
  • 診療行為の傾向
  • 季節変動

分析を通じて、「どの診療科における患者が多いのか」「どの季節に、どのような症状を持つ患者が増えるのか」を把握できます。患者数の推移を知れば、人材配置の適正化を通じて人件費の削減にもつながるでしょう。

レセプトの作成から診療報酬が入金されるまでの流れ

レセプトを作成してから、実際に医療機関へ診療報酬が入金されるまでの流れは以下のとおりです(※)。

レセプトの流れ

患者→医療機関→審査支払機関→保険者

患者→医療機関→審査支払機関→保険者の関係図

参照:厚生労働省参考資料第1章「レセプトとは」をもとに作成

医療機関は、レセプトを審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)へ送ります。その後、審査を経て入金される流れとなっています。

医療機関がやるべき具体的な業務を確認しましょう。

医療事務員が診療情報のデータを入力する

医師が実際に患者の診察をしたら、医療事務員へカルテを渡し「どのような治療をしたのか」を伝えます。医療事務員は、受取った情報に基づいて医療機関のPCに診療情報を入力します。

外来患者の場合は診療を受けた日、入院患者の場合は月に何度かに分けて入力するのが一般的です。この段階で、診療報酬点数の基となるデータが蓄積されます。

翌月月初にレセプトの作成・出力を行う

毎月の月初(実際に治療をした月の翌月)に、患者ごとのレセプトを作成して出力します。1カ月間の診療内容や診療報酬を作成し、間違いがないか確認します。

レセプトコンピュータ(レセコン)と呼ばれる専門的な機器を活用し、データを整理するのが一般的です。診療報酬点数表に基づいて、各診療行為を適切な診療報酬点数に変換していきます。

責任者によるダブルチェックを行う

一次的には医療事務員がレセプトの作成と出力を行い、二次的に責任者(上長や病院経営者)がダブルチェックをします。診療内容と点数の整合性や、病名と診療行為の妥当性をチェックしましょう。

修正・誤入力があればすぐに修正し、10日までに提出できるように準備します。レセプトコンピュータを用いれば間違いがないケースがほとんどですが、コンピュータでは判断できない箇所もあります。

請求すべき項目の漏れや請求の重複がないか、目視で確認しましょう。

翌月10日までにレセプトを審査支払機関へ提出する

出力と点検が完了したら、診療を終えた翌月の10日までにレセプトを審査支払機関へ提出する必要があります。提出方法は、プリントアウトして郵送する方法と電子レセプトをデータで送信する方法があり、昨今はデータで送信するオンライン請求が主流です。

提出後は、審査支払機関や保険者によって審査され、もし不備や疑義が生じた場合は返戻されます。確認を経て、問題がなければ入金処理が進められます。

診療報酬は約2カ月後に入金される

審査支払機関や保険者による審査が完了すると、診療報酬が入金されます。審査支払機関ごとの入金日は以下のとおりです。

審査支払機関

入金日

社会保険診療報酬支払基金

診療翌々月の21日

国民健康保険団体連合会

請求月の翌月20~25日前後(都道府県によって差がある)

このように、実際に診療を行ってから診療報酬が入金されるまで、約2カ月のタイムラグがあります。通常の場合でも入金までに時間がかかり、返戻されるとさらに時間がかかってしまいます。

資金繰りの悪化によって、当面の運転資金を支払えなくなるような事態を回避するためにも、正確なレセプト作りは欠かせません。

正確なレセプトを作成するために病院経営者が取組むべきこと

PCを操作する女性

病院経営者にとって、レセプトは重要な書類であることをお伝えしてきました。正確なレセプトを作成するために、病院経営者が取組むべきことを解説します。

未経験者向けのマニュアルや研修体制を整備する

未経験者を採用した際には、スムーズにレセプト業務を覚えてもらうよう、マニュアルを整備するとよいでしょう。マニュアルを作成し、業務手順を明確に示せば、未経験者でもあんしんして業務を覚えられます。

文章だけでなく画像を盛り込んだマニュアルを作成すれば、視覚的に理解しやすくなります。新卒者や未経験者の採用をする機会がある場合、わかりやすいマニュアルを作成しておきましょう。

レセプトの作成は専門性が求められるため、人的・時間的リソースがあれば研修をすることも効果的です。また、診療報酬は2年に一度改定されるため、定期的な見直しを通じて最新情報にアップデートしましょう。

勉強会の開催や外部研修の参加を促す

勉強会の開催や外部研修の参加を促し、スタッフに医療事務の専門的な知識を習得してもらうのも効果的です。診療報酬点数表の読み方と解釈を理解し、実際の査定事例を学びながら実践的な知識・スキルを習得できるでしょう。

実務経験が豊富な担当者からじっくりと教えてもらう機会を設けることで、未経験者の不安を軽減できます。また、OJTをする人的余裕があれば、マンツーマンで指導する環境を整備することも検討しましょう。

学んだ研修内容を実際のレセプト作成で即座に実践し、アウトプットすれば、理解が深まります。

即戦力となる有資格者や経験者を採用する

レセプト業務の即戦力がほしい場合は、有資格者や経験者を採用するとよいでしょう。たとえば、以下の資格を保有している方はレセプト業務に精通していると考えられ、採用後に即戦力となってくれる期待が持てます。

  • 診療報酬請求事務能力認定試験
  • 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
  • 医療事務管理士技能認定試験(医療事務管理士)
  • 医療事務実務能力認定試験(医療事務実務士)
  • レセプト点検業務技能検定試験
  • 医事コンピュータ技能検定試験

求人を掲載する際に、応募条件として資格の保有や実務経験を必須とすることで、応募者を即戦力人材に絞り込めます。

即戦力候補者からの応募がない場合は、人材育成やキャリア支援の一環として、既存の従業員に対して資格取得を支援する方法も検討しましょう。

電子カルテやレセプトチェックソフトを活用する

電子カルテを自院に適した内容に設定し、医事コンピュータと連携させれば、受付から会計までの情報を一元管理できます。これにより、レセプトに関する業務を効率化できるだけでなく、正確性・精度を高めることも可能です。

レセプトチェックソフトとは、診療報酬明細書の記載内容に誤りがないかをチェックしてくれるソフトです。ソフトを導入することで、病名や算定漏れを自動でチェックでき、正確なレセプト作りにつながります。

便利な機器を活用すれば、誰がレセプト業務を行っても一定の正確性を担保できます。入力ミスを削減し、病名と診療行為の整合性をチェックしてくれるため、不慣れな方が作業する場合でもあんしんです。

資金繰りを改善したいときはAGメディカルの「診療報酬担保ローン」の利用を

正確なレセプトを作成していても、医療機関が診療報酬を受取るまでにはタイムラグがあります。入金や支払いのタイミング次第では、一時的に資金繰りが苦しくなる可能性は十分に考えられるでしょう。

資金繰りを改善したいときは、AGメディカルの「診療報酬担保ローン」がおすすめです。審査支払機関に対して有している債権を担保に、100万円から最高10億円のご融資を受けられます(詳細はこちら)(※1)。

調達したお金は、事業投資だけでなく各種税金・社会保険料のお支払いにも利用できます。また、新たに雇用する従業員の支度金や、当面の給与を用意する目的で利用することも可能です。

保証料・事務手数料は不要で、原則保証人も不要です(※2)(※3)。ファクタリング利用中や赤字決算の状況でも検討できるため、興味がある方はお気軽にお問合せください。

(※1 )

所定の審査により融資額は変動します。また、審査結果によっては融資できない場合があります。

(※2 )

支払期日前に返済する場合(一部償還を含む)は、早期返済違約金をいただきます。

(※3 )

法人の場合は代表者様に原則連帯保証をお願いします。

まとめ

レセプトの請求によって得られる診療報酬は、医療機関にとって貴重な収益です。レセプトの作成に誤りがあると、受取れる収入が減ってしまったり入金が遅れたりして、病院の経営に悪影響が出てしまいます。

つまり、正確なレセプトを作成することは、病院を健全に経営するうえで欠かせません。適切に診療報酬を受取り、資金繰りが悪化してしまう事態を防ぐためにも、病院経営者の方はレセプトの重要性を認識する必要があります。

病院経営者自身がレセプトの理解を深めるのはもちろん、未経験者向けのマニュアルや研修体制を整備したり、電子カルテやレセプトチェックソフトを活用したりして、いつでも正確なレセプトを作成する体制を整備しましょう。

資金繰りに困った際には、AGメディカルの「診療報酬担保ローン」をご検討ください。設備資金や運転資金など、さまざまな資金用途でご融資を行っており、病院の経営をサポートします。

監修者

牧崎 茂

牧崎 茂

株式会社プロアクティブコンサルティング 代表
2009年4月に中小企業診断士としてまた、久光製薬㈱での薬事監査業務の経験を活かし、GXP QAコンサルタントとして独立。GMP工場のコンサルティング、監査業務を含む、GXP(GLP, GCP, GVP等)に関連した幅広いエリアでのGXP及びQMSの構築に関する専門家として活動を行っている。

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