【施設経営】障害者支援施設とは?必要な資格やビジネスモデル、開設の流れを紹介

介護施設/訪問介護

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車椅子の男性と話しかける男性

障害者支援施設とは、障害者の日常生活や社会生活を総合的に支援するための施設です。「障害者総合支援法」に基づいて運営されており、日常生活の介助だけでなく、自立訓練や就労移行支援などを提供しています。

障害者支援施設の主な収益は、国から受取る報酬(給付金)です。安定して経営するためには、国が決定している報酬体系や加算・減算の仕組みなどを理解することが欠かせません。

この記事では、障害者支援施設の経営で知っておくべき内容や、具体的なサービス内容などを解説します。

障害者支援施設とは

障害者支援施設とは、施設に入所する障害者に対して、夜間の入浴・排せつ・食事などの介護や生活に関する相談および助言を行う施設です。日中活動の支援は「生活介護」と呼ばれ、夜間における支援全般は「施設入所支援」と呼ばれます。

なお、障害者支援施設の利用対象者は以下のとおりです。

  • 生活介護利用者のうち、区分4以上の者(50歳以上の場合は区分3以上)
  • 自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援B型の利用者のうち、入所させながら訓練等を実施することが必要かつ効果的であると認められる者又は通所によって訓練等を受けることが困難な者
  • 特定旧法指定施設に入所していた者であって継続して入所している者又は、地域における障害福祉サービスの提供体制の状況その他やむを得ない事情により通所によって介護等を受けることが困難な者のうち、1又は2に該当しない者若しくは就労継続支援A型を利用する者)

出典:厚生労働省「障害者福祉分野の最近の動向」

施設入所支援以外の施設障害福祉サービスでは、生活介護・自立訓練・就労移行支援や就労継続支援B型などを実施しています。就労移行支援と就労継続支援は、ともに安定的な就労を支援するための枠組みです。

項目

就労移行支援

就労継続支援B型

目的

就職するために必要なスキル・技能を習得する

就労する機会と生産活動へ参加する機会の提供

対象者

就職を希望する方

現時点で就職に不安があり、経験を積みたい方

工賃

なし(一部事業所ではあり)

あり

利用期間

原則2年間以内

定めなし

つまり、障害者支援施設は障害者が日常生活だけでなく、経済的にも自立した生活を送れるように支援する施設です。利用するサービスは本人が選択でき、障害の程度や生活スタイルなどに応じて、柔軟に利用できる仕組みです。

障害者支援施設が提供するサービス内容

障害者支援施設が提供する障害福祉サービスには、さまざまな種類があります。主に「訪問系」「日中活動系」「施設系」「居住支援系」「訓練系・就労系」に分かれ、以下のようにまとめられます。

項目

内容

訪問系

・居宅介護

・重度訪問介護

・同行援護

・行動援護

・重度障害者等包括支援

日中活動系

・短期入所

・療養介護

・生活介護

施設系

・施設入所支援

居住支援系

・自立生活援助

・共同生活援助

訓練系・就労系

・自立訓練(機能訓練)

・自立訓練(生活訓練)

・就労移行支援

・就労継続支援(A型)

・就労継続支援(B型)

・就労定着支援

出典:厚生労働省「障害福祉サービスについて」

上表のほかにも、障害福祉サービスに関連する事業として、利用計画の作成やサービスを行う事業所の情報提供や連絡調整などの支援が受けられる「計画相談支援」があります。

障害者支援施設を経営する際には、「どのような支援を手厚く行いたいのか」を決めたうえで、提供するサービスを決定しましょう。

障害者支援施設の経営に必要な資格

障害者支援施設の経営にあたって、経営者に特定の資格は不要です。福祉に関連する資格を有していなくても、経営をはじめられます。

しかし、施設の管理者は「社会福祉主事任用資格を有する者」または「社会福祉事業に2年以上従事した者」という要件をクリアしなければなりません。

さらに、サービス事業所ごとに、障害者総合支援法に基づくサービス管理責任者の配置が義務付けられています。

サービス管理責任者が担う役割は以下のとおりです。

  • 個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の作成、定期的な評価などの一連のサービス提供プロセス全般に関する責任
  • 他のサービス提供職員に対する指導的役割

なお、サービス管理責任者になるには、実務経験を積んで厚生労働省が定めた約6カ月の研修を受けなければなりません。詳細な要件は以下のとおりです。

実務経験

障害者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援などの業務における実務経験(5~10年)

研修修了

・支援従事者初任者研修(講義)

・サービス管理責任者研修(講義および演習)

・サービス分野ごとの研修も実施

出典:厚生労働省「障害福祉サービスにおけるサービス管理責任者について」

また、障害者が安心して働き続けられる環境の整備を目的として、厚生労働省があらたに「障害者就労支援士(仮称)」という資格の設立を検討しています。

「障害者就労支援士(仮称)」は、障害者雇用や就労支援に関する総合的な知識や技能をもつことを証明する資格です。

受検するには、障害者就労支援の実務経験3年以上または、ジョブコーチ養成研修を修了し、障害者就労支援に従事していることが必要です。

なお、経営者自身が福祉に関する資格や経験を有していない場合は、障害者支援施設の経営を新しくはじめる際に、有資格者や経験者の採用が必須となります。

「障害者就労支援士(仮称)」は、早ければ2027年度後半から検定が実施される予定です。今後の動向に注目しましょう。

障害者支援施設のビジネスモデル

電卓の上に車椅子のピクトグラムが書かれたブロックが置かれている

障害者支援施設の経営をはじめたあと、継続的に障害者を支援するためには収益を得なければなりません。

以下で、障害者支援施設がどのようなビジネスモデルで成り立っているのかを見ていきましょう。

障害者グループホーム経営の場合

障害者グループホームは、障害を持つ人同士が共同生活をしながら、自立をめざす施設です。日常生活の介助だけでなく、コミュニケーションの取り方やお金の管理など、生きていくうえで欠かせないことをサポートします。

グループホームの形態は、アパート・マンション・一戸建て・公営住宅など、さまざまです。

障害者グループホームの収益は、国からの報酬が9割程度を占めており、ほかに利用者からの家賃・食費によって成り立っています。施設によっては、家賃ではなく「水道光熱費」という名目で料金を設定しています。

なお、国から受取れる報酬は単位数(基本サービス費+加算)で決まっており、いわゆる公定価格です。受取る報酬が、生活支援員に支払う人件費や家賃・光熱費を上回れば、黒字経営となります。

就労継続支援B型の場合

就労継続支援B型は、障害者が工賃を得ながら生産活動に参加し、自立をめざす事業です。企業に就職して働くことが難しい障害者に対して、生産活動の場を提供し、必要な知識やスキルの習得をサポートします。

就労継続支援B型でも、収入の軸となるのは国から受取る報酬です。さらに、障害者の生産活動によって得られる収入もあるため、高い付加価値のある製品を生産できれば収入が増えます。

ただし、障害者へ支払う工賃や、生産活動に伴う経費が発生する点には留意しましょう。障害者への工賃は生産活動の利益から支払わなければならず、生産活動の売上が工賃を下回っていると、報酬の減算や指導を受ける可能性があります。

障害者支援施設の経営を成功させるコツ

障害者支援施設は社会的な意義が大きく、経営するにあたってやりがいが大きいという魅力があります。

安定的に施設を経営するにあたって、経営者として知っておくべきポイントやコツを解説します。

加算を漏らさず計上し減算を防ぐ

国から受取れる報酬は、国が定めた基準に基づいて計算します。質の高いサービスを提供すると「加算」され、多くの報酬を受取れる仕組みとなっているため、加算項目を漏らさず計上することが大切です。

たとえば、「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定」では、医療的ケアが必要な利用者の受入れ体制を拡充したときの加算項目が新設されました。該当するサービスを適切に提供すれば加算したうえで国へ報酬を請求できるため、漏らさず計上しましょう。

加算があるいっぽうで、「減算」という仕組みもあります。たとえば、感染症や災害に備えた業務継続計画が未策定の場合は基本報酬が減算され、さらに、虐待防止措置未実施減算や業務継続計画未実施でも減算となります。

収益性を維持・向上させるためには、「適切に加算を増やすこと」「減算を防ぐこと」を意識することが大切です。

高齢化ニーズに対応する

高齢化の進展を受けて、障害者支援施設も高齢化ニーズに対応する必要性があります。

厚生労働省の資料によると、令和2年3月時点の施設入所支援の利用者数は、平成25年3月時点と比べて以下のように増減しています。

年齢層

増減率

20歳以上30歳未満

26.7%減少

30歳以上40歳未満

38.2%減少

40歳以上50歳未満

26.7%減少

50歳以上60歳未満

5.2%増加

60歳以上65歳未満

15.4%減少

65歳以上

33.6%増加

出典:厚生労働省「障害福祉分野の最近の動向」

全体的に高齢者が増えており、日本の人口動態を考えると、今後も高齢の障害者の利用者数は増えると推測できます。

今後は介護事業所と連携したり、介護保険指定事業所としての適用を受けて介護保険事業を行ったりすれば、収益の幅が広がるでしょう。

利用者を確保する

利用者を確保できなければ、国からの報酬や利用者からの収入を得られません。そのため、利用者を確保するための営業活動や工夫は不可欠です。

利用者を確保するための基本的な方針は、「認知度を高める」「信頼できる施設であることをアピールする」ことです。障害者本人だけでなく、保護者にも「あんしんして利用できる施設」という印象を与えることは欠かせません。

たとえば、地域特別支援学校や職業訓練校と連携したり、自社のホームページやSNSアカウントを開設して定期的な情報発信を行ったりする方法が考えられるでしょう。

また、夏祭りやフリーマーケットへの参加など地域の活動に積極的に参加することも効果的です。

人材を確保して質の高いサービスを提供する

利用者を確保できても、質の高いサービスを提供しなければ、利用者は離れてしまいます。利用者に質の高いサービスを提供し、満足度を高めるための努力や工夫は欠かせません。

経営者自身が障害者福祉に関する知識を習得するだけでなく、障害者支援に関するノウハウや知識・経験を持っており、質の高いサービスを提供できる人材の採用は必須です。

経験がない従業員を雇用する場合でも、継続して教育を行えば優れた人材に育ってくれます。人材採用や人材育成にも意識を向けて、質の高いサービスを提供できる環境を整備しましょう。

障害者支援施設を開設するときの流れ

車椅子の男性と、それに寄り添う男女2名

実際に障害者支援施設を開設するとき、どのような流れで準備や手続きを進めればよいのか、順を追って解説します。

項目

内容

市場調査

地域のニーズや競合施設を分析する

事業計画の作成

具体的なサービス内容や運営経営方針、収支計画を具体的な数字に落とし込んで言語化する

法人登記

株式会社や社会福祉法人などから法人の形態を選択し、法務局で法人登記を行う

物件の選定

行おうとしているサービスの内容に応じて、適切な立地と広さを持つ物件を探す

スタッフの採用

サービス提供に必要な資格を持つスタッフ(管理者・サービス管理責任者・生活支援員など)を採用する

指定申請手続き

障害者支援施設として指定を受けるために、都道府県や市町村に申請書を提出する

営業準備

契約書や利用規約の作成、スタッフの教育などを行う

提供するサービスによっては、物件に広さや間取りなどの要件が定められていることがあります。事前に自治体の窓口に確認しておくとよいでしょう。

また、物件を選定する際にも「事業用としての利用が可能か」を確認する必要があります。

障害者支援施設を経営する際には、自治体へ指定申請を行い、都道府県知事から指定を受けなければなりません。施設を開設する都道府県で、指定申請の受付スケジュールや流れなどを確認しておきましょう。

事業開始後の資金調達ならAGメディカルの「障害福祉サービス費等担保ローン」

障害者支援施設の経営をはじめたあと、順風満帆に進むとは限りません。利用者を思うように確保できなかったり、利用者離れが起こったりして、資金繰りが苦しくなってしまう可能性があります。

また、国から受取る報酬である国民健康保険団体連合会(国保)からの入金は、サービスを提供してから2~3ヶ月後となります。場合によっては、資金繰りに困ってしまう可能性が考えられるでしょう。

資金繰りにお困りの際は、AGメディカルの「障害福祉サービス費等担保ローン」がおすすめです。

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(※1 )

所定の審査により融資額は変動します。また、審査結果によっては融資できない場合があります。

(※2 )

支払期日前に返済する場合(一部償還を含む)は、早期返済違約金をいただきます。

(※3 )

法人の場合は代表者様に原則連帯保証をお願いします。

(※4 )

本シミュレーションの結果は、本日をお借入日とした場合の参考値です。目安としてご利用ください。

まとめ

障害者支援施設は、障害者の生活支援だけでなく自立支援などを行い、社会的に重要な役割を果たしている事業です。提供するサービスは多様であるため、ご自身がイメージしている支援内容に応じて、経営方針を決めましょう。

障害者支援施設の経営を成功させるためには、加算を漏らさず計上することと減算を防ぐこと、安定的に収支バランスを安定化させることが大切です。また、高齢者のニーズに対応するためのサービスを提供することも効果的でしょう。

障害者支援施設の主な収入源は、国からの報酬です。一時的に収入が支出を上回って資金繰りが苦しくなったり、運転資金を用意したりしたい場合は、AGメディカルの「障害福祉サービス費等担保ローン」の活用をぜひご検討ください。

監修者

大泉 稔

大泉 稔

株式会社fpANSWER代表。明星大学日本文化学部言語文化学科卒業。企業研修の講師を務めていて、受講者の人数は延べ1万1千人を超える。専門誌やWEBへの寄稿も対応しており、最近は個人のお客様から投資のご相談を頂く機会も増えてきている。また専門学校2校および高等学校1校、進学塾の各非常勤講師も兼務。

資格情報

1級FP技能士・貸金業務取扱主任者・1種証券外務員
https://www.cfpm.biz/外部リンクアイコン

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